監修:S・マーフィ重松(東京大学助教授) 監修・翻訳:岩壁 茂(お茶の水女子大学助教授)
■VHS ■日本語字幕スーパー ■収録時間:58分 ■解説書付
■商品コード:VA-2010 ■¥48,600(税込) |
|
 |
マーラー博士の体験療法は、クライエントとセラピストが並んで座り、目を閉じることからはじまる。この一風変わったスタイルが採られるのは、クライエントが自らの体験の中を探検し、そこに眠る自己実現の潜在力である強い感情体験に到達するためである。視覚イメージを最大限に使うために、目蓋を閉じる。そして、「気にかかる」場面を映し出して蘇らせる。クライエントは、深い感情と接触することにより、「新しい」自分になってその場面をもう一度体験する。セラピストは、クライエントと一緒にその場面を生き、感情をともに体験することにより、クライエントの「新しい」自分の発現を支える。強い感情体験、クライエントとのイメージを使った共感、「新しい」自分になっての行動リハーサルなど非常に興味深いプロセスを見ることが出来る。
アルヴィン・マーラー博士 (オタワ大学教授) |
アルヴィン・R・マーラー博士について
アルヴィン・R・マーラー博士は、1954年にオハイオ州立大学から臨床心理学で博士号を取得し、デンバー在郷軍人病院(V A
Hospital)で勤務、コロラド州心理学会の会長に就任した。1967年にオハイオ州マイアミ大学の教授と臨床クリニック所長を兼任した後、ウォータールー大学(University
of
Waterloo)からオタワ大学へと転任した。1992年には、マーラー博士がそれまでに著した10冊の著書と約180点にのぼる論文の功績を讃えて、オタワ大学研究優秀賞(Ottawa
Award for Excellence in Research)を受けた。
体験的心理療法の概要
一回の面接は、以下の4つの段階を通過するように計画されている。
第1段階:強い感情を体験する瞬間に身を置く:内的な体験潜在力に到達する
この段階は、強い感情を感じる非常に特別な瞬間を発見し、そこに身をとどめて、あたかもそれが実際に起こっているかのようにその瞬間を生きることを可能にする。強い感情との接触により深い体験潜在力に触れ、それを感じ、実感することができる。その手続きは、@まず、強い感情をもった場面を探すように指示を与える、Aクライエントが強い感情をもった場面を見つける、Bその場面をもう一度体験し、特に強い感情をもった瞬間を見つける、C活性化された内的体験潜在力に到達し、それに対して開かれた姿勢をとり、感じ取る。
第2段階:内的体験潜在力と融合するため、それと良い関係を作る
この段階では、到達した内的体験潜在力を歓迎し、味わい、受け入れ、そしてそれと融合するための良い関係を作ることを可能にする。 セラピストは、それを達成するための様々な方法をクライエントに教える。
第3段階:過去の場面で、内的体験潜在力になる
この段階で人は、過去の場面を想像し、その中で、いつもの慣れた自分から内的体験潜在力になりきることによって根本的な質的変容を遂げる。 その手順は、@適当な過去の場面を見つける、Aその場面でどうやって内的体験潜在力になるのか見せる、B他の場面を探し、その中で、内的体験潜在力になる。
第4段階:現在で新しい人間になる
この段階では、今ここで本質的に新しい自分になること、これから直面する場面においてその自分になって探索することを可能にする。つまり第1段階でもっていた嫌な感情からある程度解放され、セラピーの外の世界においてこの新しい自分になることを目指す。 その手順は、@近い将来対面する状況を選んだあと、現実的ではないやり方で行動することを想像し、新しい自分を楽しむ、Aそれらの場面を現実的ではないやり方で楽しみながら、それがどんな感じか試す、B将来対面する場面を使って新しい自分を練習し、洗練する、C最後に、セラピーの外で、この新しい自分になる心の準備ができるとともに、そうなりたいと思う意志が高まる。
関連する出来事
このセラピーにおいて、一つ一つの面接は、クライエントが強い感情を体験した最近の出来事、場面などに集中するようクライエントに促すところからはじまる。これが「関連する出来事」の代わりになる。テッドは売春婦が街角に立つ地域へ車を走らせ、自分の性器を出して売春婦に見せようかと思うことが2度あったが、2度とも実行に移さなかった。2度とも第1回面接のはじまる前の1週間以内のことである。
これまでの面接の経緯
収録された面接の前に2回の面接を行った。2度とも体験療法の4段階全過程を完了した。初回面接は上に記した場面からはじまり、テッドの中の深い部分にある何かを開き、そこに入ることができた。これは、個人の深層に宿る資質、つまり内的体験潜在力であり、感情を見せ、自分自身の扉を開き、他者と分かち合う感覚の体験である。
初回面接の終わりに、テッドは新しい人間になっていた。彼は心を開いたままの状態、つまり自分の気持ちを見せ、他者にそれを示す心の準備ができたし、またそうしたいという意志ももっていたのだ。まず自分の妻とそうすることに決め、自分の希望や恐怖に対して心を開き、最近遭った事故、売春婦のこと、性器を見せたかったことについても心を開く決心がついた。
第2回面接では、妻の前で新しい自分になり、自分の気持ちを伝え、売春婦との件や性器を見せたかったことについても話した場面を探索した。このような衝動を感じることはそれ以来なかった。そして、仕事中に怪我をした彼の父親に対して何も出来なかった時のことが、強い感情を体験した場面として挙げられた。その時に接触することが出来た内的体験潜在力は、あからさまに文句を言ったり、悪気のない冗談を言ったり、遊び心たっぷりに冷やかしたりすることに関わっていた。
第2回面接の終わりに、テッドはこの新しい人になり、遠慮なく文句を言ったり、健全なユーモアを楽しむことができた。彼はもう、過去に父親に対してあったように、身体が凍り付いて感覚を失い、はっきりとした感情を見せることもできず、緊張し、気持ちを抑えつけ、自分の中にしまい込んでしまう古い自分ではなかった。
第2回面接の終わりまでに、テッドはこの新しい自分になってお父さんと話す気持ちの準備ができた。父親をおだてたり、昔父親がやったこと、例えば、店から安い小物を盗んだこと、―これは家族の誰も口にしたことがないが―について冗談を言ってみたりしようと思った。このまるで新しい人になって、彼はこの場面のリハーサルを行い、自分がやりたいことをより明瞭にした。そして、父親だけでなく他の人に対してもこの新しい自分になる準備ができたのだった。
|